大人の男

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力が緩んだままの彼の手から、私の左手を抜いた。 そして初めて彼が私にキスした時と同じように、彼の頬に両手を添えた。 自分が主導権を握っているのに、心臓自体が私とは別に意思を持って勝手にドキドキする。 「目閉じて・・・」  私はお願いする。 「ヤダ。もったいない」  瞬きもしない彼。 「お願い。恥ずかしいから・・・」  彼は少しだけ微笑んだように見えた。 潤んだ瞳は、ゆっくりと閉じられる。
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