別れの花火と可愛い女1.5

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おもちゃの指輪を買った彼は、私の手を取って言った。 「これ、靴のお礼」 冗談ぽく言うと、指輪を私の指にはめようとした。 ・・・ 「うふふ。小指にしか、入らないよ・・・」 子供用のおもちゃだから、大人の私には当然小さい。 私が笑うと、彼も笑った。 「おもちゃって、思ったより小さいんだね」 そう言うと、辛うじて左手の小指に入った指輪を抜き取ろうとした。 「いいの。小指につけとくから」 私は慌てて左手を引いた。 彼がくれた指輪。これがきっと形ある最後の思い出になる。どんな小さな物だって、彼が私のためにくれた物なら、私にとっては大切な物だった。 私の反応に驚いた彼が固まっている。 私も自分の行動が客観的に見れば不可解だと分かっている。別れてゆく相手がくれる物、ましてや子供用の指輪なんて普通は要らない。 周囲の賑やかさの中、私たちは無言のまま向かい合っていた。 そんな中、彼がポツリと呟いた。
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