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「薬指に入らなくて良かった・・・」
「え・・・」
「やっぱり僕じゃ、東子さんの薬指を飾ることは出来ないってことだろうね」
今にも泣きそうなのに、無理して笑顔を作る彼。その表情に、私も泣き出しそうになる。それ以上彼を見ることができなくて、急いで俯いた。
『薬指』という単語で、彼の気持ちの強さを改めて知る。
私の中には無かったゴールを彼が見据えていたことを今初めて知った。
私は指輪のはめられた小指をギュッと右手で握りしめた。
「ありがとう」
今まで私に向けられた穏やかな眼差し、優しい言葉、かわいい笑顔。
その彼の全てに心から感謝した。
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