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彼との時間が楽しい程、別れが近いことが寂しかった。
それでも時間は待ってはくれない。
夜店で明るい祭会場を抜けて河原に辿り着くと間もなく、開始を告げる花火が上がった。
大玉ではないけれど、カラフルで小菊のような花火が何発も連続でパンパンと音を立てて咲き乱れる。
それと同時に、彼が私に手のひらを差し出した。
「ん?」
私は横に居る彼を見つめた。
「最後だから、東子さんの温度もちゃんと覚えておきたいんだ・・・」
私の頬を涙が一粒流れる。その後を追うように、次から次へと溢れ出てくる涙。
私は彼の手を取った。
相変わらずひんやりと冷たい手。
そういえば、手が冷たい人は優しいんだっていうよね。
それは意外と、本当なのかもしれない・・・。
キツく手を握り合い、涙でぼやける花火を見上げる。
私も、入江くんの温度を忘れない。
絶対、絶対忘れないから・・・。
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