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「浴衣、絶対似合うと思ってたんだ。今日の東子さん、本当にキレイだよ。このまま諦められるか不安だな・・・」
「ひぃ・・・く」
―――これ以上、寂しくなること言わないで。それでなくても、十分に寂し過ぎる。―――
「僕がもう少し大人だったら、結果は違ってたのかな。今の時点でどっちが東子さんを幸せにできるかって考えたら・・・やっぱ課長なのかな・・・」
「ひぃっく」
私は相づちすら打てないほど泣いていた。
花火が照らす彼の整った横顔も涙で濡れている。
『もう少し大人だったら』なんて、きっと私が世間体を気にしてたことを知っていたんだ。
今から思えばその象徴がハイヒールだった気がする。
突然ハイヒールを履かなくなった私。そんな私を彼はどう見ていたんだろう。
課長と出かける時だけハイヒールを履いたことを、どう感じたんだろう。
「ごめ・・・ん。ひぃっく。本当・・・に、ごめ・・・ん」
今更ながら、私は無神経で最低な女だ。
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