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『何でもない』の言葉に、一瞬キョトンとした入江くん。私もちょっとバツが悪い。
「あ、はは」
笑ってごまかしてみたけど、なんだか情けなくて、悲しくて、自分にガッカリだ。
仕方なく軽く会釈して「じゃあ」とその場を離れようとした時
「手、治ったんですね」
私を救う彼の声が聞こえた。
あの頃と変わらない。彼は私の気持ちをわかってくれる。
私も彼に似たようなことを聞きたかっただけなのに、いろいろ考えすぎて臆病になってしまった。
そのハードルを彼は簡単に飛び越えて見せる。
「うん、すっかり良くなったわ」
彼から聞いてくれたから、私も当たり前のように彼に聞けた。
「入江くんも、もう額の傷痕目立たないね」
「はい。僕も完全復活ですよ。今更ですけど、僕のせいで怪我させてしまって、すいませんでした」
「ううん。入江くんのせいじゃないわ。気にしないで」
ここには今、私たち二人だけ。こんなに近い距離で彼の顔を見たのは、目と目が合ったのはどれくらいぶりだろう。
「少し痩せたみたい・・・」
私は無意識に彼の頬に手を伸ばしていた。
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