別れの花火と可愛い女2

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『何でもない』の言葉に、一瞬キョトンとした入江くん。私もちょっとバツが悪い。 「あ、はは」 笑ってごまかしてみたけど、なんだか情けなくて、悲しくて、自分にガッカリだ。 仕方なく軽く会釈して「じゃあ」とその場を離れようとした時 「手、治ったんですね」 私を救う彼の声が聞こえた。 あの頃と変わらない。彼は私の気持ちをわかってくれる。 私も彼に似たようなことを聞きたかっただけなのに、いろいろ考えすぎて臆病になってしまった。 そのハードルを彼は簡単に飛び越えて見せる。 「うん、すっかり良くなったわ」 彼から聞いてくれたから、私も当たり前のように彼に聞けた。 「入江くんも、もう額の傷痕目立たないね」 「はい。僕も完全復活ですよ。今更ですけど、僕のせいで怪我させてしまって、すいませんでした」 「ううん。入江くんのせいじゃないわ。気にしないで」 ここには今、私たち二人だけ。こんなに近い距離で彼の顔を見たのは、目と目が合ったのはどれくらいぶりだろう。 「少し痩せたみたい・・・」 私は無意識に彼の頬に手を伸ばしていた。
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