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時間で言えば、一分程度のやりとり。たったそれだけの時間なのに、彼の声が、優しい眼が、穏やかな空気が、一気に私をあの頃に連れ戻した。
あの頃のように自然に彼に触れるはずだった私の手。
それは不意に彼の手によって拒まれた。
彼は私の手首を柔らかく掴んだまま言った。
「ダメ・・・ですよ」
困ったような笑顔で見つめられ、私はようやくハッとした。
「ご、ごめ・・・」
自分の行動に驚き、掴まれた手を引っ込めようとした。
え・・・ 何?
頬を触ることは拒んだけれど、温度の低い手は私の手を離さない。
私は彼を見た。彼もまた私を見つめている。
懐かしい感覚が私を包む。
このまま時が止まればいいのに・・・。
そう思った時、後ろでエレベーターの扉が開き、数人の社員が降りてきた。
私たちは手を離し、急いで距離を取った。
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