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「ちょ・・・ま・・・」
どうしていいのか、なんと答えればいいのか。さっきまで、緩やかな時間が流れていたのに、状況は急転直下だ。
「うふふ、照れてらっしゃるんですか?」
「ち、違・・・」
「あんまり困らせるとお気の毒ですね。さ、行きましょう」
自分が私を追い込んだくせに、平気で『気の毒』だなんて。その上言い訳すらさせない。
私に声をかけた男子社員が「すいません。知らなくて・・・」と頭を掻き、他の皆も私に一礼して立ち去り始めた。
その瞬間を見計らったように、里緒奈ちゃんが声を上げた。
「あ~!わたし、忘れ物しちゃった。みなさん先に行ってて下さい。入江さんと一緒に、直ぐに行きますね」
そう言うと彼女は、入江くんに絡みついたままエレベーターに向かった。
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