437人が本棚に入れています
本棚に追加
これまでの人生で、これほど視線を集めたことがあっただろうか。
とてつもなく居心地の悪いオフィスで、私は努めて平静を装おうとしていた。
入江くんは出社はしているようだが、席に姿はない。
彼はこの状況で仕事をすることをどう感じているのだろうか。
「滝川、ちょっといいか？」
遠巻きに噂だけする人の中、突然名前を呼ばれてビクリとする。
声をかけてきたのは、相澤課長だった。
「は、はい」
私は、針のむしろと化したオフィスを横切り、課長と共に小会議室に入った。
課長は花火の日の深夜から私と連絡が取れず、酷く心配してくれていた。
後で携帯を確認したら、何十回と着信が残っていた。結局私が課長からの電話に出たのは昨日の早朝、病院で目覚め大騒ぎした後だった。
とりあえず無事だから心配要らないということと、明日（既に今日だけど）詳しく話すとだけ告げて電話を切っていた。
「で、その怪我は事故のせいか？」
会議室に入るや否や、私の左手を見つめながら課長が聞いた。
最初のコメントを投稿しよう！