企てる者

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「あ!僕これから用事があるんだった!もっと2人とお話したかったけど...」 「また会ったら話しかけてください。こいつも喜ぶので。」 「先輩またお話しましょうね!」 夏目先輩が小さく手を振ると、それに応えるように朱希が手を振る。 「あれ?蘭様と来栖様?」 声がする方に視線を向けると、東雲先輩と杜峨先輩がいた。 「先輩達も今帰りですか?」 「はい。そうだ!来栖様、今度蘭様の親衛隊初顔合わせがあるので是非来てください!...良かったら蘭様も...」 頬を赤くして上目使いになる東雲先輩。 「そういうのに本人が出てもいいもんなんですか?」 「はい!蘭様が来ていただければ、みんなの士気も高まりますし、本人と接点を持つだけで制裁の抑制ができますから!」 そういうことなら出た方がいいだろう。 「わかりました。では決まったらまた教えてください。」 「僕も行くよ!」 「はい!詳しいことがわかりましたらご連絡しますね?」 ニコニコしている東雲先輩に対し、杜峨先輩は明後日の方向を見て、眉間に皺を寄せていた。 「どうしたの雪吹?」 東雲先輩も不審に思い、杜峨先輩に声をかけた。 「なにか心配事でも?」 「いえ、先程蘭様と来栖様が話をしていた彼が...」 「夏目先輩のことですか?」 「夏目?えぇ...どこかで見たような気がするんですが...思い出せなくて。」 先輩は記憶の中から夏目先輩のことを思い出そうと頑張っていたが、やはりどうしても思い出せないようだった。 「きっと一瞬どこかで見た、とかそういうやつじゃない?」 「....かもしれないな。」 先輩達は、また今度と言って、俺達の前から姿を消した。 「行っちゃったね。」 「あぁ。」 俺達も寮に帰るために、再び歩き出す。 「それにしても、杜峨先輩のあの発言...」 「なんだ?」 「腐的センサーが良くない方を指してるんだよねぇ。」 「それは当てになるのか?」 「なるよ!僕のセンサーが間違ったことはないんだから!」 「はいはい。」 ブーブー文句を言う朱希を軽くあしらう。 この時ちゃんと朱希の言っていたことを気に留めていれば、あんな悲劇は起こらなかったのかもしれない。
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