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「そ...うま?」
目に涙を称えた朱希が俺を見る。その上には朱希より体格のいい男がいてその手はまさにベルトを外そうとしているところで止まっている。
「こっんのっ!!」
俺は直ぐ様その男を殴り倒し、縛られて動けない朱希を抱き抱えた。
「朱希...大丈夫か?」
朱希の顔は俺の胸部に埋まっていて見えないが...震えている。
俺はその震える体を強く抱き締めた。
「あーあ、失敗かぁ。案外早くばれちゃったね。」
悪びれもせず、寧ろ楽しそうに笑っている夏目先輩。
「蘭君、そんなに睨まないでよ。まだなにもしてないんだからさぁ。」
ケラケラ笑う夏目先輩を俺はさらに強く睨みつける。
「あんたはなぜこんなことをした!朱希はなにもしてないだろう!?」
「...そうかもね。だけどそんなことはどうだっていいんだ。」
どうでもいい?
「わからないって顔してるね。まぁ、君にはわからないかもね...次々に人を魅了していく君には...」
顔を下に向けているから先輩がどんな表情をしているのかわからない。
「僕の事は、副会長様から聞いたよね?」
ぱっと顔を上げたその顔は先程と同じように笑顔を貼り付けていた。
「擢兎先輩の親衛隊隊長...だろ?」
せいかーいと言ってケラケラ笑う。
「他には?これも聞いたんじゃない?副会長様に近づく奴を制裁という名目で暴行、強姦を命令したって。」
ニコニコ笑いながら話す夏目先輩の意図がわからない。
「それ全部本当だよ?」
「なんでそんなこと!」
急に先輩の顔から笑顔が消え、無表情になる。
「なんで?だって僕の擢兎様に近づくやつは消えて当たり前なんだよ?僕だけが擢兎様の側にいればいいんだ。だから今まで擢兎様に寄ってくる虫を駆除してきたんだ...それなのに擢兎様は僕を見てくれない...擢兎様を一番理解して愛しているのはこの僕なのに!」
ポタッと夏目先輩の目から涙が零れ落ちた。
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