体育祭 後編

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「僕はただ...擢兎様に見てほしかっただけなのに...君が来てから擢兎様は君ばかりを見て...君は僕から擢兎様を奪ったんだ!僕のなによりも大切なものを!...だから僕も君から奪おうと思ったんだ。君が大事にしている来栖君を... クスクスと壊れたように笑いだした。 「貴方は...その気持ちを擢兎先輩にちゃんと言ったことがあるんですか?」 「え...」 「自分の中の想いを、他人にぶつけるんじゃなくて、ちゃんと擢兎先輩に言葉でぶつけたことはあるんですか?」 俺の言葉に動揺する夏目先輩。 「な..に言って..そんなことっ言えるわけないでしょ!?」 「何故です?言わなければ伝わらないんですよ?貴方がどれだけ擢兎先輩を想っていても、擢兎先輩にそれが伝わっていなければただの自己満足だ!擢兎先輩が貴方を見ることは、これから先もないでしょうね。」 ぐっと押し黙る夏目先輩。 「だからこの際、思っていることを全部言ったらいいですよ。ねぇ?擢兎先輩?」 「え?」 ほぼ空気と化していた擢兎先輩に呼びかけたら戸惑っていた。 「擢兎先輩も夏目先輩の想いを受け止める義務がありますからね。」 「そう...ですね。」 「じゃあ俺達は外に出てるのでなにかあったら叫べば助けに来ますので。」 ニコリと2人に微笑み、縛られている朱希と先程殴り飛ばして気絶させた男を引き摺って部屋を出た。
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