一章

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「あ、あの……瀬川がSランクなのはここにいる誰もが理解していますが、やっぱり僕にはわからないんです。……どうして瀬川の『パン作り職人』〈クリエイトハンド〉が重要視されているんでしょうか?」 「パン作る能力じゃねぇよ」  クラスの誰もが思った事柄を、代表して質問する少年に、暁人の批判の声が上がった。 「ふむ。……確かに瀬川の『小麦粉の錬成手』〈クリエイトハンド〉は一見、Sランクのようには見えないな……」 「いやだからパン作る能力じゃねぇよ?」 「……正直言うと、私はプラネッターでもそれの専門家でもないからな。はっきりした事は言えない。ただ私達に知らされていることは、政府自体もこの瀬川がSランクとして認識されている理由が分かっていないってことだ。……まぁ丁度本人がいることなんだし、直接聞いてみれば分かると思うが……そこの所どうなんだ?」  興味津々という文字が露わになっている表情を浮かべた百華がそう問うと、クラス全員が一斉に暁人へ視線を投げ飛ばす。ジリジリと痛々しい位に突き刺さる注視。だが暁人は、そんな注目を気にすること無く、平然と言った。 「え? うん、まぁ……どうなんだと言われてもねぇ。俺も良くわかんないし、そもそもこんな能力が危険に見えるかって話だよね。能力が発現してもできるもんはパンとか、キーボードとか、小学生の国語の教科書とか……この前なんか便座でてきたんだよ便座。便座っておまえ、俺にどうしろって言うんだよ。ねぇ? ……っあむ」  という事である。暁人のプラネットパワー『創造神の右手』は、どんな物でも作り出すことができる奇跡の業……なのだが、その力の発現、想像、形成は無作為によるものだった。要するに、不定期な時間に能力が勝手に作動し、適当に、何かが造り上げられる、というもの。その実用性は皆無、危険どころか驚異すらない、そんな力だった。 「だ、そうだ。……それと瀬川、……授業中の飲食は校則違反なんだが、そこの所もどうなんだ?」 「え? いやいやモモッチがしまえって言ったじゃん? だからしまってるんですよ」 「腹じゃない。バックにしまえという意味だ」
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