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「バックだって? ……油でギットンギットンになるじゃねぇか!」
「はぁ……なら選べ。お前がギットンギットンになるか。バックがギットンギットンなるか」
「キャー! どっちもギットンよ! ……って選択肢有る様で無いからねそれっ?」
「なら三つ数える。い~ち、にぃ~い、」
「ぐ、ぬぬぬ……」
「さぁ~ん。……さぁどっちだ?」
「……そんな事言ったってしょうがな――アブシッ!」
そんな二人のハイペーステンポに、クラスメイト達はついて行けずに唖然としていた、ワケではなく、またもや全員が心を通わせてこう思うのであった。――またか――と。
普通だったら『鬼』である百華に、一度でもしめあげられると、誰もが二度と反抗しない程に恐怖を覚えるのだが、暁人だけは違った。……何度も言うが、肝が据わっているワケでは無い。ただ単に唯我独尊。オブラートを突き破って率直に言うならば、ただのアホだからだ。
「あ、あの……」
一教師と一生徒で独走している中、またもや生徒が手を挙げ、声を吐き出した。声質は先ほどよりも透き通った声。女子生徒だ。
「なんだ?」
席から引きずり出した暁人に腕を回し、首を挟んでいる百華は、モンスターペアレントをも恐れない勢いでキツく絞め上げていた。「ギビュギビュギビュ!」などと奇声を吹き上げる暁人は昇天寸前、目が逝っている。そのせいか、女子生徒は少し怯え、たどたどしく言葉を繋げた。
「え、えと。瀬川くん……『最強』〈Sランク〉を倒すと、倒した当事者が『最強』〈Sランク〉になれるっていう噂を聞いたんですけど……それって本当なんですか?」
「……ほぅ」
彼女の発言に興味を抱かせたのか、先程まで夢中になっていた首絞めを中断し、暁人を解放した。
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