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夕焼けの明かりさえ包み込む強烈な光は、彼等の足を止めるに十分な迫力だった。
――ナイスタイミング。丁度良い所で能力が発現したぜ――なんて、暁人は思っているに違いない。
「え、え? なんで? なんで?」
光源が一番驚いていた。
「なんで……――ッハ」
しかし、一瞬の動揺は消え去った。この状況を免れる策でも思いついたのか、暁人は目の前の三人を見据え、小さく笑い出す。
「ふ、っふふふふ……どうやら、本気を出すしかないみたいだね」
「なん……だと?」
そう言って、存在感を示す黄金の右手を掲げ、彼等に向けた。
「っう……」
異様な圧力が彼等を包み込み、足が一歩後ずさる。不敵な笑みを浮かべた暁人は、それほどにまで面妖だった。さっきまでの攻防は逆転し、一進一退が打って変わる。
「さてとそろそろ、コホン。……喰らうがいい! 我がプラネットパワーを!」
息を静かに吸い込む暁人は、「っは!」と声を張り上げ、右手に神経を集中させた。
「ひぃっ!」
その声に対し彼等は、ビクッ、と身体を跳ね上がらせる。のだが、
「…………」
未だ暁人の右手は、光を帯びたままだった。
沈みかけた夕日が照らす洛陽の光が、暁人の表情を朱色に染める。静寂の空気に、西の空を悠長に羽ばたく黒い鳥が、しらける鳴き声を響かせた。同時に、草原を揺らす一陣の風も吹き込み、高揚した身体を冷ます。
けれど暁人の力は醒まされなかった。それがどういう事なのかと言うと、
「……あ? 何も、……起こらなくね?」
その通り、何も起こらないままだった。当たり前だ、能力の発現は自分でコントロール出来ないのだから。それでも、期待してしまったのだろう。自身の力が覚醒する事に。
「は? 何を言っている。……既にお前らは――死んでいるのさ」
「な、なんだと!」
「…………」
「…………」
「え、いや。……生きてるよな?」
「は? いやだから、そう言う意味じゃなくてさ、比喩だよ比喩。お前らは既に死ぬ状況に陥っているっていう……そういう、あれだよ」
「……はぁ、いやでもさぁ……現になんも起こってないんですよね」
「あ、あのね。だからね。もうお前らはあれよ、死ぬ状況なんだよ。それがどう言う意味なのかというとね、まぁ話は長くなるんだけッ――はい来たぁあああ!」
「えぇっ?」
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