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……だけどだ。気づいてほしい。目を開けて手に持つそれをもう一度見てほしい。笑っていないで、能力の発現を最期まで見届けてほしい。
確かに勘違いしてしまうかもしれない。でも、それはそうかもしれないという仮定であって、決してそうなるとは限らない。
何が言いたいのかと言うと……
「おい、お前……何笑ってるんだ?」
まるで汚物でも見るかのような冷めた瞳で、学ラン少年は問いかけた。いや、彼だけではなく、後ろにいる二人さえも冷たい視線を送っていた。ヒステリックに笑う暁人を。
だが、そんな視線には全く動じず。またしても笑みを吹きこぼす。
「何、だって? くふっ、ふふふ……じゃあ逆に聞こう。俺が右手に握っている物、これは一体――何にみえる?」
そう言いながら、暁人は右手を突きつけ、形成されたそれの銃口を学ラン少年に向けた。しかし、彼等もまた暁人同様全く動じない。それどころか呆れた表情を顔に表し、平然と答えた。
「何って……ドライヤー」
「そうだ。俺が今手に持っているのはドライ……ってえ? ドライヤー?」
今になって気がついたか。自分が何を作り出したのかを。
「ドラっ……え? これ、え? ドライヤー? え?」
現実逃避。自分が手にするそれを見て、何度も目を見開く暁人は、滑稽にしか見えなかった。そんな光景を傍観している学ラン少年らは肩透かしを喰らったかのように、唖然とする。
そしてふと思ってしまった。――コイツ大した事ないんじゃね――と。
「あの~、……もういい? 行かせてもらっても」
「え、うん――って待てよっ! いや待てよっ! ちょっとタイム。インターバル!」
そんな暁人の態度が決定打になったのか。彼等の思惑は確信に変わり、行動に移った。
「……おい。行くぞオメェら」
ぼそぼそと低い声で言い放つと、後方の二人が「おぉ」と叫び、駆け出した。
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