一章

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二十年前、突如現れた極小惑星が地球の大気圏に突入し、日本の関東地方、栃木県南部に衝突した。大きさは、サッカーボールにも満たない小さな隕石。記録にはそう記述されている。 しかし、それを直視した者は誰も存在しなかった。いや、存在はしていたのかもしれない。なぜなら、   その日栃木は、日本から消滅したのだから。  本当に誰もが唖然としていた。たった一つの石ころが、日本の一つの地域を灰に化せた現実に。 しかし、問題はそれだけではなかった。後にロストインパクトと呼ばれるようになったその事件は、悪化の一途をたどっていく。それはプラネットパワーと呼ばれる力。ロストインパクトを迎えた後に誕生した世代に、奇妙な力が宿されたのだ。まさに超能力その物。 プラネッターと称される様になった、人類の枠を外れた存在が次々と生まれ、政府はいずれ脅威になりかねない子供達を一つの施設に収容した。 人外区域。それが彼らの在住する閉ざされた籠。  化物と迫害され、隔離された区域での生活。あの忌々しい事件の日から、少年少女は保護と言う語呂の良い前置きで、監視、管理される、そんな憐憫な存在となってしまった。    だが、そんな籠の中とも言える劣悪な環境であろうと、少年少女は天命を受け入れ、日々を賑やかに過ごしている。理不尽な天命を背負わされたからこそ、毎日を華やかに彩ろうと工夫をしているのだ。  思春期。彷徨の時期。若さに溢れた初々しい彼らは、たった一度きりの人生を、少しでも楽しく過ごしている。  彼も、そのひとりであった。
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