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さすがに人が少ないからか、不安にかられる。
大丈夫よ、何年も前の話なんだから。
自分に言い聞かせながら、私はイヤホンを耳につけて、お気に入りの曲を聞き出した。
これで少しは気が紛れるはず。
「……あれ、メールだ」
携帯の振動で現実に戻ってきた私は、メルマガか何かだろうとおもい、それを開いた。
そして、それを見た瞬間に辺りを勢いよく見回した。
運悪く、私の周りには誰もいなくて、ただ雨音だけが響いているだけだった。
「も、……やだ……」
消え入りそうな声でそう言うと、私はある人に電話をかけた。
「もしもし……悠希? うん、今駅前のとこいるんだけど、迎えに来てくれない? ……また、あのメール来たんだ……」
駅の構内で私はずっと外を見つめていた。
この雨はいつになったらやむのだろうか。
私の心はいつになったら晴れるのだろうか。
「……ねえ、あなたはいったい誰なの?」
先程届いたメールに書かれていた内容。
“一人で帰ってるの?
僕はいつでも朱里ちゃんを見てるからね”
見えない視線が怖くなって、私は自分で体を抱きしめた。
ただ、早く悠希に会いたくて。
たった十分がすごく長く感じたんだ。
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