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母ちゃんの仕事が一段落したら、やっと背中から解放されて、
市場で働くおじさんたちにかまって遊んでもらっていた。
そのときの知り合いらしい。
俺が放り込まれたあの店の大将は。
そのことも全く覚えていないけど。
資金もなく、コネもなにもない俺が初めて店を出せたのは、
その大将と、再修行に行かされた店の大将が力になってくれたからだ。
保証人になってくれて、仕入先に口を利いてくれたりして…
一人前に店のオーナーになれたんだ。
それからは怒涛の追い上げ。
俺の人生の巻き返しが始まったんだ。
無くすものなんてなにもない。
守るものもなにもない。
怖いものなんてなにもなかったんだ。
だから、やれた。
たぶん…
護るべき大事なものがあったなら、やれなかったと思う。
大事な人を路頭に迷わすのは、
いくら俺でも怖いから。
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