突然

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夕方からの数時間。 有里がバイトに入っている時間が楽しみだった。 忙しい時間で、話もロクにできなかったが、 それでもどんなに大将に怒鳴られても平気だった。 有里が見ているから。 若かったな… 好きで好きで。 店休の日に初めてデートした。 ずっと一緒にいたいと思った。 有里も家に居辛いようで、なかなか帰りたがらなかったから、 男と女の関係になるのは早かった。 有里が大学を卒業して、一般企業に就職してすぐに結婚した。 会う時間が合わなくて、それでも会いたくて… その頃には俺は客前に出してもらえるようになっていて、 それまでは、裏で下拵えと、洗いものしかさせてもらえなかったから。 自信もついていた。 自分の店を持ちたいと思うようにもなっていた 出店の資金を貯めたら、有里と二人で店を切り盛りして、こじんまりと生きていけたらと夢見ていた。 だけど、 有里は他に男をつくり、俺を裏切って… 挙げ句の果てに、なにも告げずに居なくなった。 俺は、有里に、 捨てられたんだ。
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