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嫌なことを思い出した。
あんなやり場のない気持ちなんて、思い出したくもなかったのに。
あの子は俺の子ども…?
あの有里の言いようだと、そう言うことになる。
そんな風に納得するのか?
俺…
俺の言いたいことのほとんどが言えなかった。
物置部屋に入り、古いパソコンを探し出した。
あのとき…
有里と暮らした部屋に残っていたもの。
有里の荷物はすべて処分した。
でも、このパソコンは俺と共同で使っていたから、残していたものだった。
電源を入れる。
な訳ないか。
コンセントをさして、電源を入れた。
なんとか生きてる。
住所録をプリントした。
およそ100人
この中で今連絡が取れる人が何人居るだろうか。
あ、思い出した!
あのとき、有里は、二人で貯めた金を持ち逃げしたんだ。
店を出すために、毎月俺の給料のほとんどを貯金した。
早く一人前になって、俺たちの城を持ちたいと、
爪に火を灯すように生活しながら貯めた金だったのに。
また怒りがこみ上げてくる。
まあ、今更そんなことは言わないけど。
そんなチンマイ男じゃない。
銀行なんて、出向かなくてもあっちから来てくれる。
用があったら電話一つでことは済むんだ。
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