突然

17/27
前へ
/304ページ
次へ
健太郎を連れて出勤。 「いいか、会社では絶対にお父さんと呼ぶなよ。おじさんと呼ぶんだ。 うちではお父さんでいいから。」 車の中でそう言った。 ほんの軽い感じだった。 でも、たぶん、 健太郎は傷付いたんだろう。 それからお父さんとは呼んでくれなくなった… 「高林。昨日はすまなかったな。 でだ、 この中で連絡の取れる人がいるか調べてくれ。 元女房の友人だ。 10年前の住所だから少ないとは思うが、頼む。」 こういうときに頼れるんだ。この男。 「公私混同といいます。 でも、 社長の仕事がスムーズに運ぶのであれば、それも私の仕事です。」 だろ? お前ならそういうと思ってた。 ってか、知ってた。 こんなに会社が大きくなると思わなかった… 有里が消えて、仕事にも身が入らず、辞めようと思った。 板前なんて時間もないし、たいした給料にもならない。 それは俺が半人前だったせいだが。 必死で貯めた金も、有里に持ち逃げされて、目標も無くした。 そんな俺を大将は昔からの友人でもある、ライバル店に再修行に行かせた。 有里との思い出しかないあの店から遠ざけたかったのかもしれない。 そこで俺は…運命の出逢いをしたんだ。 今の仕事の元になるやり方と。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

610人が本棚に入れています
本棚に追加