突然

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その店は… 俺がそれまでいた店とは違い、料金を極力抑えて店舗を増やし、 売り上げを上げるというやり方だった。 そのサポートについた俺は、その仕事が楽しくて仕方なかった。 なにもないところから立地条件を調査し、店長ほかスタッフを教育して、ほんの数ヶ月で開店。 まるで流れ作業のように無駄のない時間と動き。 魅せられた俺は、 そのノウハウを自分のものにしようと必死で勉強した。 昔からそうだが、 俺は大人に可愛がられてきた。 特に言ってみれば父親世代の男の人には、なぜか力になってもらった。 それは、俺の人徳とかじゃなくて… 母ちゃんが男に紛れて男並みに働いていたからだと思う。 朝はほとんど夜中から魚市場の中で働いていたし、夕方からも、市場の近くの食堂で働いた。 俺が小さい頃は、母ちゃんの背中にくくりつけられて、 一緒に仕事場に出ていたらしい。 よく覚えていないけど。 40年近く前はそんなだったんだ。 そんな格好でも雇ってくれていた。 いい時代だったんだ。 今は、 保育園が決まらないから雇ってもらえないとか、 仕事がないから保育園に入れないとか。 鶏が先か卵が先か… って話だけど。
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