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その人とは、電話で話すだけだった。
高林が調べてくれたあのリストの中で、連絡が取れた人は数人。
その中で、親身になって聞いてくれたのは、あの人ただ一人きり。
有里のことを有里先輩と呼ぶその人も、
独りで男の子を育てているという。
それは、×なのか死別なのかなんて聞くことはでないけど。
有里とは俺たちが結婚してからだから、もう17,8年会っていないと言うが、
それでも俺の話を真剣に聞いてくれた。
そして、
健太郎のことも心配してくれて、早く転校の手続きをとって学校に通わせた方がいいと助言してくれた。
そうだな。
友達でもできたら、寂しい気持ちも紛れるし、何より毎日が楽しい。
社長室のソファーでゲームばっかやってるよりずっといい。
それに…
夜中にひとりで部屋で泣いてるようだ。
気がつかないふりをしてるけど。
有里…
おまえは、自分の子供がこんなにつらい思いをしていることを、
どう思っているんだ?
「行ってみなさいよ。
断られるに決まってるでしょ?
調べられるわよ。あなたの収入とか、いろいろ。
育てられない環境にないと断られるだけよ。時間の無駄。」
あのとき、有里はそう言った。
俺が、迎えに来ないなら施設にでも入れようと言ったとき。
有里は健太郎を施設に入れようと思ったのだろうか。
だからあんなことを言ったのだろうか。
こちらから連絡が取れないのだから、聞くことはでないけど。
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