目眩

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「お父さんは、健太郎が生まれた事も知らなかった。 だから初めは驚いたし、信じられなかったんだ。 でも、お母さんと電話で話をして、健太郎が俺の子供だって聞いて、 お母さんの言葉を信じる事にした。 大丈夫。 お母さんは迎えに来てくれるよ。 今は忙しくていつになるかわからないけど、ここで頑張っていたらきっと早く迎えに来てくれるよ。」 そんなことはわからない。 けど、多分健太郎はもういっぱいいっぱいなのだと感じた。 学校に慣れたら、きっとそんなことは言わなくなると。 それまでに有里とはもう一度話し合わなければいけないのだが。 「本当にそう思ってる?」 食い下がるな… そうだよな… もし俺が他人だったら、健太郎はひとりぼっちということになるのだから。 「ああ。 そう思っているとも。 お母さんがそう言うんだからそうだ。 お母さんの言葉を信じるよ。 俺の子供を生んで今まで育ててくれていたことに感謝する。 健太郎がここに来なかったら、知らないままだったんだ。 嬉しいよ。」 そう。 この、ほとんど喋らない、でも、存在感抜群の健太郎を、 今では息子だと認識している。 それは、美結さんが、 「父親でもない人に大事な子供を託すようなことはできませんよ。 健太郎君は健司さんの子供に間違いないと思いますよ。」 そういってくれたからなのだが。 「なんか楽しそうですね。 お料理がお好きなのね。 こっちまで楽しくなります。」 我に帰った。
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