目眩

11/93
前へ
/304ページ
次へ
視界に入った女優さんが、ウインクをした。 ガンバレ と、声に出さず口が動く。 ん、んん… 少し咳払いして、気持ちを立て直した。 「子供って、パワフルですね…」 あーなんか、 自己嫌悪… なんでここでそんなことを言うんだ? 「ですよね。 大人があんなに走り回ったら倒れちゃうかもしれないですよね。」 すっかり子供の話。 でも、それが精一杯だったんだ。 彼女のシルクのような手に触れて、気の利いたことなど何も思いつかなかったんだ。 まるで中学生。 手に触れたくらいでこんなに舞い上がるなんて。 自分でも信じられない。 「今日は楽しかったです。 ひさしぶりに笑った気がします。 また、柊くんに健太郎と遊んでやってほしいとつたえてください。」 眠ったままで起きようとしない健太郎を抱きかかえ、お礼を言った。 ドキドキが止まらないままで、気がついたらお開きの時間。 それぞれに子供が居るので、遅くまでは居ないようだ。 「こちらこそ。お世話になりました。 本当に美味しいご馳走を、皆さんも喜んでいらしていたわ。 ありがとうございます。 もうすぐ夏休みだから、お泊まりにいらしてくださいね。 柊も喜びますわ。」 お泊まりって…
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

610人が本棚に入れています
本棚に追加