目眩

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「夏休みの宿題と数枚着替えを持たせてくださいね。 柊、なかなか宿題を終わらせないから、来ていただけたら助かりますわ。」 健太郎のことか… そうだよな。 当たり前か。 「ご迷惑じゃないですか?」 美結さんは健太郎の頬を撫でて、 「ええ。 健司さんさえよければ、是非。」 母親の顔。 こんな表情もあるんだ… 「じゃあ、お言葉に甘えようかな… 初めてのことでどうしたらいいかわからないんです。 会社に連れて行くべきか、それとも家に一人で居させるべきかって。」 健太郎がお邪魔しているときは俺も顔を出すことができる。 そんなことがまず頭をよぎる。 もっと知りたい。 美結さん… なんか… 心臓が痛い。 今は健太郎を通してしか通じていないことが虚しい。 いつか、女性として俺に接してくれるときがくるだろうか。 「ちょっとけんちゃん。 いったいどういうつもりなのよ! 何度電話しても出ないし折り返しもない。 まさか…女でもできたんじゃないでしょうね!」 忘れてた。 この前まで女。 香奈。 すっかり別れたつもりでいた。
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