突然

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社長室を出ようとして、あの子を見た。 不安そうに俺をみている。 「会議なんだ。待ってられるな?」 頷く健太郎。 ドアに近づいてもう一度デスクに戻る。 有里の手紙をこの子が見たら… そう思って、鍵のかかる引き出しにしまった。 会議に身が入らない。 だってそうだろう? 突然、俺の息子だっていうのが現れたんだから。 親になったつもりも、これからなろうというつもりもない。 俺は会社を大きくすることだけを生きがいに、今まで生きてきたんだから。 あのとき… 有里が出て行ったとき。 男がいただろうが。 そいつの子供だ。そうに決まってる。 問題点をいくつも取り上げて、会議室を出た。 今はそれどころじゃない。 会議の内容だってまだ未熟で、もっと煮詰まってから召集してほしいもんだ。 「どうかされましたか?まだ会議の途中じゃないですか?」
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