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「ほら、早く。薫くんに電話でお礼言いなさい」
「え?」
お母さんが私に自分の携帯を持たせると、「璃紅はこの部屋使ってね」そう言って部屋から出て行った。
そっと携帯を開いてみると、さっきのメール画面がそのまま。
【お手数かけてすみません、りっちゃんにカード渡しておいてください。明日でもいいので。それと、素敵なクリスマスをお過ごしください】
もうっ、二人でコソコソと何してるんだか。
そう思いつつも頬が緩む。
そして薫ちゃんの名前をアドレス帳から見つけると、発信ボタンを押す。
『あ、おばさん?』
聞きたかった薫ちゃんの声が耳元で聞こえる。
いつもは両耳で聞こえる薫ちゃんの声は右耳に凝縮されてる。昨日も会ってたのになんだか懐かしくて、言葉がつまる。
「……。」
『あれ?おばさん?』
「薫ちゃ……」
最後までキチンと発音されなかった薫ちゃんの名前。名前を呼ぶだけでこんなに胸が痛くなるなんて……。
喉の奥がジワジワ熱くなって、瞳に涙がたまってくるのがわかる。
『…っ、璃紅?』
薫ちゃんが私の名前を呼んだ瞬間、目を瞬くと涙がポロポロとこぼれていった。
「カードっ、…ありがと……、」
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