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「教官! 助けて下さい! 教官ッッ!」
モニターから、すがるような彼女の視線が突き刺さる。
必死の形相で懇願する彼女に、俺は目を合わせる事すらできなかった。
メインカメラの映像に目を移せば、無数の敵機が彼女の機体に群がるのが見える。
『救出は不可能。自身の安全確保に努めよ』
それが、本部からの指示だった。
「教官、お願いです! 私、まだ死にたくない! 死にたくないよぉっ!」
彼女の言葉の一つ一つが、俺を殴りつけてくる。
俺の判断ミス、俺の浅慮、俺の責任、俺の……俺の……
「怖い……怖いよっ! 教官ッ! 返事してください、教官……っ!」
「……すまん、愛流……」
「教官!? やだ、やだ! 教官! 教官――っ!」
泣き叫ぶ愛流の姿に耐えられず、俺は通信を切った。
次の瞬間、愛流の機体が白い閃光を放って爆発するのが、俺の視界に入る。
「すまん……すまん愛流……っ!」
涙で霞む視界を無理やり拭い、俺は戦線を離脱した。
俺を慕い、俺を信じ、俺についてきてくれた可愛い教え子、天見愛流。
――その日、俺は彼女を見殺しにしたのだった。
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