祝杯をあげよう

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《アスラside》 任務中に現れたルアンに、ひどく慌てた。 ゼン様がいるのだから、ルアンが怪我を負う事はまずない。 それは解ってはいるけど、気持ち的にはそう割りきれない。 任務を慌てて終わらせ、ルアンの元へ急ぐ。 「どうかなさったのですか!?」 わざわざ任務中に来るなんて、余程緊急の用件なんだろうか? 「いや、皆が隊員になったから、祝いの席を設ける事にしたんだが…… 悪いが、料理を作ってくれないか?」 (え?) それを伝える為だけに、此処へ来たんだろうか? ルアンの腕の中にいるゼン様に視線を向けると、承諾しろと言わんばかりに目を細められた。 本当にそれだけの為に来たらしい。 ホッと安堵したのと同時に、危うさも感じられて気が気ではない。 ルアンはこんなに子供っぽい人だったのだと、改めて思い知らされた気分だ。 こんな無茶はしないで欲しい。 「それは構いませんが…… わざわざルアンが言いにくる必要はないでしょう?」 「コックを頼むのも考えたんだが、やっぱり俺はアスラの料理が一番美味しいと思うし、頼みたいと思ったのも俺なのだから、俺が言いに来るのが筋だろう?」 私に伝える手段はいくらでもあるって言いたかったのに、そんな嬉しい事を言われた。
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