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「今更遅いかも知れねぇけどな
お前の近くにいる人物が協力者やシリエだった場合、正体は露呈しているからな」
確かに、ジークの言う通りだ。
俺の正体を知っている人は多い。
シリエと関係のない人達である事を願うしかない。
「魔力は戻ったようだな」
「…………」
一瞬でガルヴォルを思い浮かべてしまって、返事に窮する。
また悲しみがぶり返し、ローブを被る。
それだけで、ジークには俺の状態が解ってしまったのだろう。
「身体を壊すなよ?」
「分かっている」
何も言わないのは、俺の為だろう。
そのまま総帥室を出る。
ガルヴォルが死んだ事を、ジークは誰にも言っていないようだ。
その方が助かる。
今は、心配して……という理由でも、その名を口にして貰いたくない。
たぶん、泣いてしまうだろうから。
だから俺は、悲しんでいられなくなる程、任務を受け続けるしか方法がない。
エンドドロップを出る為に歩いていると、隊員達の驚きに満ちた顔が見えた。
そして次の瞬間には、嬉しそうに声をあげる。
“帝王様”と──
こんな歪な俺が『無欠の帝王』だなんて、笑えもしない。
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