読み切り短編小説

2/4
前へ
/44ページ
次へ
「くたばれクソガキが!!」 そう言われ、回し蹴りを喰らう。 どうしてこんな状況になっているのかは……簡 単だ。盗みをしたからだ。 俺にはたった1人の大切な妹が帰りを待ってい る。 だがお金もなく、両親も先に死んでしまった。 そんな過酷な状態で俺と妹は2人取り残され た。 物を買うお金もない、そうなれば生き残るのに 必要な事……そう、盗みを働くしかないのだ。 それだけではない。妹は今、非常にまずい状態 に陥っている。だから一刻も早く薬を持ち帰り たい。 ……だがもちろんお金がない上に俺が盗みを働 かしている事はこの町全体に知られている為、 俺とまともに話してくれる人など誰一人いな かった。 それどころか俺はゴミ扱いだ。おまけに妹も酷 い扱いをされ、近所の子供から虐めや嫌がらせ を受けている。 すべて俺が悪い……何も出来ない無力な俺が悪 いんだ…… なのにどうして妹まで酷い扱いを受けなければ ならないんだ…… 薬の盗みに失敗し、大人逹からリンチに合って ボロボロになった俺は力を振り絞り、妹が待つ 家へと帰った。 家に帰るとしんどいのにも関わらず笑顔で迎え 入れてくれる妹の姿があった。 「おかえりなさいお兄ちゃん、その傷はどうした の?」 妹には盗みをしているなんて言えるはずはな く、俺はいつも心配をかけないように色々な言 い訳を考えている。 「ちょっと転んでね、怪我をしただけだから心配 は要らないよ」 「そう……あまり無理はしちゃダメだよ?」 妹の笑顔は心の支えになった。妹のこの眩しい 笑顔がなければ俺は今頃は生きていられなかっ た。 しかし、妹の命はもう長くはない。俺が十分に 食べ物や飲み物を与えられなかったから体が 徐々に弱ってきているのだ。 そんな状態なのにどうして妹は笑顔で居られる のだろうか……あまりにも不思議な事だった。 ――と突然、家の窓ガラスがパリンと音を立 て、割れる。 割れたと同時に少し大きめな石がゴトンと家の 床に落ちた。 何事かと思い、外を覗くとガラの悪そうな若者 が2人金属バットを担ぎ、こちらに向かって来ていた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加