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夜8時を指す大きな時計を見上げる。
空はすでに真っ暗なのに目の前にそびえ立つお城はきらきらと目が痛くなるほど輝いていて
まるでそこだけが昼間のような活気で包まれている。
それぞれがそれぞれのオシャレを楽しみ、
気品あふれるその格好でお城の中に導かれるように入って行く。
いつも、着古した衣服を身につける庶民の私も今日ばかりは
とっておきの洋服でそこに立った。
三か月で一回の王宮での無礼講。
一か月前にパーティーに参加できる16歳になった私は
これが初めての社交場。
だからだろうか、さっきから胸のあたりが騒がしい。
導かれるように中に入る人たちに続き足を進めたいのに。
こんなにお城を近くで見るのも初めてなのに、ここに入れるなんて…。
「どなたかと待ち合わせですか?」
一瞬自分にかけられたものだとは思わなかった。
目線の下で私を見つめる視線を感じて声思わず息を飲む。
見上げる視線を動揺しないように息を付きながら下に落とした。
「……」
ずっと見ていたかのように視線を落とすと目と目がぱっちりあった。
「…すみません。 少しおどかせてしまいましたか?」
唖然と言葉を発しない私に対してその人は申し訳なさそうに眉を寄せる。
本来ならここで否定の言葉でも繋いでおくのが普通なんだろう。
でも、本音でいうなら
……それは驚いたに決まってる。
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