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「えっと…」
見つめるその視線に耐えかねて私はふいっと視線を左右に振る。
盗み見るようにその人を見ると
綺麗なブロンドの髪が社交場の光に反射してより一層、美しさを増していた。
社交場の光が逆光となって顔ははっきりとは見えないがその顔立ちははっきり見えなくとも解る美貌。
見に纏う服も庶民とは格が違う質の良さ。
どう見ても私とは住む世界が違う男の人が目の前にいる。
社交場がはじめての私はそんな人に会うのも初めてで
どう切り返したらいいかわからない。
「……? どうかしました?」
「い、え… あの…社交場が初めてなもので…」
「そうなんですか。 …はじめて見る顔だなと思ったんです」
にっこりその人は頬笑む。
つい、呆気な声を漏らしてしまった。
だって社交場に入って行く人はまばらだけどとどまることはない。
大きなその会場はあますことなく人がごった返している。
そんな中、社交場に来る人を覚えているはずないのに。
「クス… もちろん、こんなに人が居たら一人一人の顔なんて覚えてません」
その気持ちを察したかのようにその人は言葉をつなげる。
「だけど、貴方が以前から社交場に出向いていたのなら
私が声をかけないはずありませんから」
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