金色に染まる教室で

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 学校の授業も終わり、運動部の大きな掛け声を聞きながら、私はある教室に来ていた。そこは物置のような教室で真ん中に長机が1つあり、壁にはいくつかのパイプ椅子が立てかけてある。その他学校の備品の置かれた教室で、パイプ椅子に座って本を読む男子生徒がいた。 「保科(ほしな)か。今日は遅かったな」  彼は私に気付いて本から顔を上げた。男にしては長い黒髪が澄んだ瞳へとかかっている。 「私、掃除当番だったんで。少し遅れちゃいました」 「そうか」  表情を変えることなく、彼、鞍馬聡(くらまあきら)先輩は再び本へ視線を落とした。私もパイプ椅子を長机の所まで持っていき腰を下ろした。 「あれ、先輩。それ、また違う本ですか?」  私は先輩の読んでいる本を指差しながら尋ねてみる。するとその予想は当たっていたらしく、先輩は顔を上げて私を見た。 「ああ、そうだが。よくわかったな」  表情には出ていないけれど、少し驚いているらしい。 「いや、そんな大したことじゃないですよ? ただ、本の厚みとか読んでるページの位置とか、なんかなんとなくだけどちょっと違うなぁって思っただけで」 「それが分かるだけでも凄いと思うぞ。よく見ているんだな」 「え! べ、別にそんな見てる訳じゃ!」  私が慌てて弁明すると「冗談だ」と笑って見せた。その微笑みにドキッとして、体が熱くなる。それを悟られないように、話題を変えることにした。 「その本、どんな内容なんですか?」  先輩はいつの間にか本へと視線を向けていて、いつもの無表情へと戻っていた。 「教えない」 「じゃあ、タイトルは?」 「教えない」 「……最近そればかりですね」  前はいろいろと本の話をしてくれていたのに。最近は何故か内容はおろか、タイトルすら教えてくれない。 「あまり知られたくないんだよ」 「……どんな本読んでるんですか」  一瞬、頭に浮かんだその内容を振り払い、先輩を見る。 「お前の考えてるようないかがわしい本じゃない」 「わ、私は別にっ!」  私の弁明はやはり先輩には通用せず、はらりとページが捲られる。これ以上聞いても教えてくれないと思って、私も鞄から勉強道具を取り出す。そして今日授業でしたところの復習を始めた。
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