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「せ、先輩……?」
「保科、俺はお前に伝えたい事がある」
真剣な瞳で見つめてくる先輩に、その言葉に、私の鼓動が早くなる。
「な、なん……ですか?」
「先月のお前の告白に対する答えを伝えたい」
その答えに、私はドキッとした。次第に不安が心の中に広がっていく。聞きたいけど、聞きたくない。矛盾した感情が渦巻いている。
「だから、もう一度俺にお前の、保科の気持ちを聞かせてくれ」
先輩の言葉には迷いがない。覚悟を決めているんだ。1ヶ月間、ずっと考えていたのだろうか? 私と同じように。
目を閉じて、大きく深呼吸をする。心を落ち着けて、覚悟を決める。私は目を開いた。
「私は先輩の事が――」
その後に続く言葉を、私は言うことが出来なかった。目の前には先輩の顔があって。ギュッと、抱き締められていて。今、私と先輩の唇は重ねていて――。
私の頬を、一粒の雫が流れ落ちた。先輩はそっと抱き締めていた手を解き、触れていた唇を離した。
そして、
「俺も、保科の事が好きだ」
そう、言ってくれた。私の求めていた、欲しかった言葉を、言ってくれた。それが嬉しくて、今度私はから先輩に抱き付いた。先輩の手が背中へと回され優しく抱き締めてられる。それだけ胸がいっぱいになった。今はこのまま――。
その時、携帯の着信がその空気を壊した。鳴っていたの先輩の携帯だった。私は名残惜しく思いながら先輩から離れ、頬を膨らまして睨んでみる。
先輩は本当に申し訳無さそうな顔で電話へと出た。どうやら電話の相手はお母さんらしい。話の内容からしてなんか用事があるらしく、先輩はもう帰らないといけないらしい。……ということは、先輩はわざわざ私の為に時間を?
「悪い、今から親が仕事だから弟達の面倒を見ないといけない」
先輩はまだ悪いと思ってるらしく、苦い顔をしている。
「大丈夫ですよ。これからは、今まで以上に先輩と一緒にいられますから」
私は先輩に笑顔を向けた。自分の出来る最高の笑顔を。先輩もそれに笑顔を返してくれた。今まで見た中で一番素敵な笑顔を。
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