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「如何でしたか?」
表情が豊かなロボットがタイムトラベルをおえ、元の時代に戻ってきた紳士に語りかける。
「いやいや。本当に野蛮な時代でしたよ。あの時代の人達は、自分達と感性が違う人間を見かけると、すぐに攻撃的になったり、理由をつけて病院送りにしようとする。バリアがなかったら今頃、私は八つ裂きにされていたでしょう」
紳士はあの野蛮な時代を思い出して身震いした。わずか、数時間の滞在であったが、その恐怖はお化け屋敷以上のものであった。いまだ、悪寒がおさまらない。
「ですが、そんな野蛮な時代を乗り越えてきたからこそ、今のような平和な世界を手に入れることができたのです」
「全くですな。いやいや、本当に恐ろしい時代ですよ。あんな、時代に逆戻りするのだけはゴメンです」
ソファーに腰掛け休憩していた紳士。心地良い音楽で野蛮な時代で見てきた恐ろしい光景も癒されていく。
十分ばかり休憩した紳士は、受付で料金を支払った。時間旅行が可能になったとはいえ、まだまだ手軽な旅行ではない。しかし、二十世紀末期から二十一世紀初頭に関しては人間の愚かさを野蛮さを学ぶ為と、政府からの助成金もだされ、他の時代よりは安く旅行できた。
「またのご利用おまちしております」
受付のロボットは丁寧に頭を下げて、紳士を見送った。
紳士はタイムマシンがある施設から外に出た。もちろん、バリアを発生させたままだ。だって、そうしていなければ、野蛮の象徴たる核爆弾で壊滅した世界を歩くことなど不可能なのだから。
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