等不恋芽学園へようこそ

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───桜が咲く、春の季節。 春と言えば、代表的な例が入学式だ。新たな風が、小中高大問わず様々な学校で舞い込む中、とある1つの学園にも春が訪れていた。 「・・・ここだ」 校門前、1人の男子がポツリと呟く。整えられた茶髪を持ち、レンズの綺麗な眼鏡を掛けている。男としては整った顔立ちだ。 ───そして、ショタである。 彼───『成宮 空』は、晴れてこの学園に入学することができた。 彼は生まれも育ちもこの地域であり、家から歩いて、または自転車で通える範囲で、ずっと近所の学校に通ってきた。勿論、この学園を選んだのもそれが理由である。 他の学校はどれも偏差値がバカみたいに高かったからという、あまり人に言いたくない理由もあるのだが。 そんなこんなで、彼はこの学園───等不恋芽学園に入学した。 ここは私立高校であり、名前は何代か前の校長が決めたと、ホームページの真ん中辺りに無駄に大きく主張されていた。そのページを見て、もっと他の情報があっただろと思う学生は非常に多かったらしい。 ───パンッ!!パンッ!! 空「しっかりしろ僕・・・まずは出だしが肝心なんだ」 空は気合いを入れるように自分の頬を叩き、自分自身に言い聞かせる。声は震えており、緊張しているのが見受けられる。 ───彼には、この学園で成し遂げたい事があった。 内容は至ってシンプル。それは、新入生の多くが夢見る高校デビューだ。彼もまた、高校デビューを夢見る新入生なのだ。 しかし、その思いは誰よりも強い。ほとばしる程強い。何故なら、彼は───。 「あっ、くぅちゃんだー!!」 「くぅちゃんおはよー!!」 「くぅちゃん、全然背が伸びてないねぇ」 空「・・・ハァ」 ───中学校の同級生から、ショタとして子供扱いされていたからだ。 後ろから来た女子の同級生達は、わざわざ空の頭を撫でてから去って行く。 こんな、男子なら羨ましく思う扱いを、空は内心嫌っていた。だからこそ、高校生になったら男らしくなろうと考えていたのだ。 空「・・・行こ」 朝から子供扱いされた空は、ややテンションが低くなりながらも、学園内へ足を踏み入れた。同級生がいる時点で高校デビューは失敗だという事に全く気付かずに。
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