寂漠感

6/6
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
豊は頭を垂れて、もの凄いショックを受けたような演技をしていた。 すると唐突に、少し薄れていた寂漠感が津波のように襲い掛かかってきた。 (お兄ちゃん。大丈夫かなぁ) 『うぅ……』 豊が獣のような唸り声をだしながら、ぶるぶる震えている。 真由美は思わず、 「お兄ちゃん」 と叫びながら豊に駆け寄り抱きしめた。 豊も真由美を抱きしめる。 少し濡れたように光っている真由美の髪からシャンプーの香りがした。 豊は真由美の髪を口に入れて噛んだ。 (僕の心身は、どうなったんだろう。 自殺未遂する前は寂漠感は無かったのに………) 『ピンポン』 突然チヤイムが鳴った。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!