彼が消えた日（短編集）

彼が消えた日

　ここに初めて来た時と同じ光景。

　ベッドの上には畳まれた掛布団にオレンジ色の毛布。

　勉強用の机。クローゼット。

　白いタイルに広い浴槽、壁には物を飾るスペースもあるトイレ。

　格安で、こんなに素敵なところで一人暮らしができるのか。

　四年前の春、そんな風に感動したことを今もはっきりと覚えてる。

　本当に、この学生マンションを選んで良かった。

　オートロック付の、男子禁制マンション。

　ここで無かったら、私、卒業できたか分からない。

　ううん、今生きていたかどうかも分からない。