彼が消えた日

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「もしもし?」 「あー、俺。もうすぐ着くから、下降りといて」 「分かった」  たったそれだけ。  それだけだけど、彼の声を聞くとほっとしたし、幸せな気持ちになれた。  今日会ったら、もうしばらく顔を見ることができなくなってしまう。  彼は東京で、私は福岡で就職が決まっている為だ。  この部屋とも、明日でお別れ。 「……ずい分、守ってくれたね」  ありがとう。  荷物はすでに全て引っ越し先に送ってある。  ガランとした、日当たりのよい1Kルーム。  今日はもしかしたら、晃汰とホテルに泊まることになるかもしれない。  そうなったら、ゆっくりとここで過ごすことは二度と無い。
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