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背後をつける者に配慮をしなければ、あっという間に終わらせることができるが、彼だか彼女だか知らないが、その視線はリューティスからなかなかそれることはない。監視であるならば、撒くわけにもいかない。
後ろめたいことがあるわけではない。ただ知られない方がよいことがあるだけである。
休憩をはさむこともせず歩き続け、漸くサンダーベアの近くにたどり着いたのは、出発してから二時間近くたった頃であった。
茂みの向こうにいる黄熊の姿を目で捉え、木の陰にしゃがみ込む。隠れずとも不意をつくのは安易にできたが、監視か何か知らないが、こちらの様子をうかがう者がいる以上、目立つ行動はとれない。
サンダーベアの纏う電気で感電しないように、身体に結界を纏うべく、小さく魔法を詠唱する。
──黄熊の様子を見計らって、木の陰から飛び出そうとした、その瞬間のことである。
「────あぁ!!」
リューティスの背後をつけていた人物が、雄叫びと共にサンダーベアの前へと飛び出していったのは。
予想外の事態に目を見張る。しかし、その人物がとろうとした行動に、慌てて止めに入った。
襟首をつかんで無理矢理引き下がらせ、こちらに気がついて吠えながら突進してきた黄熊から逃れるために、ひっつかんでいた人物を担いで木の上に枝を足場に駆け上がる。
「“蒼氷の矢”」
──水属性の進化属性・氷属性中級魔法“蒼氷の矢”。
真っ白な矢が、木を揺らそうとしていた黄熊に向かって飛び出す。苦痛の声を上げるサンダーベアにとどめを刺そうと左手の刀を握りしめるが、肩に担いだ人物の声に、動きを止めさせられた。
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