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「絶縁素材の布を巻いているそうですが、その程度では意味をなしません。サンダーベアの電気は、そこらの絶縁体でも通電します」
中級魔物だからと侮るなかれ。サンダーベアは分類こそ中級であるが、奴等が纏う電気は雷属性の最上級魔物が常に纏っている電気とあまり変わらない。
ナイフで毛皮を剥ぎながら、水属性魔法で血抜きを行う。
「そ、そんなこと聞いたことないぞ!」
「ギルドに登録している者の中では常識なのですが……、登録なさっていないのですか?」
常識中の常識。サンダーベアを侮り、命を落とした者が、過去に何人もいるのだ。それでも中級の枠から外れないのは、ファイアベアやアースベアといった同系列の魔物が、中級魔物であるからである。
サンダーベアのみを上級とすると、分野が面倒になる──という魔法生物学者の者たちの声により、その分野は変えられることはない。
「登録してる!」
見せつけられるようにカードを突きつけられて、思わずそちらに目を向ける。
名前や年齢、属性等々が列ねられたそれは、確かにギルドカードだ。しかし、所属ギルドの欄に首を傾げる。
「“蜻蛉の想い出”?」
全く聞き覚えのないギルドだ。弱小ギルドであろうか。
「ふふん、すごいだろう。あの有名な“焔の鳥”様が所属しているギルドだぞ」
──“焔の鳥”。その二つ名には、聞き覚えがあった。確か二、三年前にSランク入りを果たした、火属性魔法と風属性魔法を使ういけすかない男だ。
裏で色々と犯罪行為を行っていると、リューティスが所属するギルドの上層部で噂されていた。尻尾が掴めないとぼやく元ギルドマスターの姿を見たことがある。
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