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「……僕は守りたいがために戦いました。ですがふと振り返って思ったのです。……僕は両親を守りたかった。それでも会いたいとは思えない」
あの場に立ち戦っていたとき、リューティスは確かに両親を守りたいと思っていたはずだった。しかし、今思い返せば会いたいとすら思えない。
大切なはずの人たち──産みの親と弟。守りたいと思っていたはずが、会いたいとすら思えないのだ。
「……リュース、……いや、リューティス・イヴァンス」
顔をあげれば眉を寄せたヤエが、リューティスを見ていた。
「お前はいったい、何をされたんだ」
赤いその瞳は揺らいでいた。彼が今まで遠慮して問うてこなかった疑問だろう。躊躇しながら声に出されたその疑問に、リューティスは小さく笑う。
「……ただ、すれ違ってしまっただけですよ」
「それだけじゃないだろう。お前は今、『思えない』って言った。『思わない』じゃない。『思えない』んだろ。……何をされた」
そうだ、思わないのではなく、思えないのだ。
リューティスはそこでようやく自分の感情のほんの一部を理解できた。──彼らのことは大切だ。だが、彼らの元に自分の居場所はない。それが怖かったのだ。
あの家に帰ってきて、もし居間の椅子が一つ消えていたとしたら、「お帰り」と言われず「いらっしゃい」と言われたら。
それが怖かったのだ。だからこそ帰りたいと思えなかった。
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