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──その知らせを伝えに来たのは、一人の女性であった。
朝から工房で弟子の代わりの雑用をしていたリューティスは、街の人々の気配がにわかにざわめき始めたことを感じ取り、書物から顔をあげた。
ぱたん、と音を立てて本を閉じたリューティスに、作業をしていた男が顔をあげて振り返る。
「……何だ?」
「何かが起こったようです。街が騒がしい」
足早に行き交う人の気配、何処かへ走って向かう気配。
「……よくわかるな、そんなことが」
「生まれつき気配や魔力に敏感でして──……誰かが来ます」
その気配は、明らかにこちらへ向かってきていた。男を見ると、怪訝そうにこちらを見ている。
直後、乱暴に扉が叩かれた。リューティスが扉を開くと、その向こうにいたのは肩で息をする女性。前髪が汗で額にはりついていた。
「Aランクのリューティス・イヴァンス様はいらっしゃいますか!?」
焦ったようなその表情に、大方の自体を悟った。──リューティスの勘は、やはりはずれていなかったらしい。
「僕がリューティスです。──緊急招集、ですね?」
女性は目を見開いた。しかし、すぐに何度も頷く。
「細工師さん、緊急事態です。ギルドへ行ってまいります」
「あ、あぁ」
振り返らずに告げた言葉。男の返答を聞くやいなや、リューティスは工房を飛び出した。その隣にギルド職員らしき女性が並ぶ。
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