九章 緊急招集、黒大鹿討伐

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   ──その知らせを伝えに来たのは、一人の女性であった。  朝から工房で弟子の代わりの雑用をしていたリューティスは、街の人々の気配がにわかにざわめき始めたことを感じ取り、書物から顔をあげた。  ぱたん、と音を立てて本を閉じたリューティスに、作業をしていた男が顔をあげて振り返る。 「……何だ?」 「何かが起こったようです。街が騒がしい」  足早に行き交う人の気配、何処かへ走って向かう気配。 「……よくわかるな、そんなことが」 「生まれつき気配や魔力に敏感でして──……誰かが来ます」  その気配は、明らかにこちらへ向かってきていた。男を見ると、怪訝そうにこちらを見ている。  直後、乱暴に扉が叩かれた。リューティスが扉を開くと、その向こうにいたのは肩で息をする女性。前髪が汗で額にはりついていた。 「Aランクのリューティス・イヴァンス様はいらっしゃいますか!?」  焦ったようなその表情に、大方の自体を悟った。──リューティスの勘は、やはりはずれていなかったらしい。 「僕がリューティスです。──緊急招集、ですね?」  女性は目を見開いた。しかし、すぐに何度も頷く。 「細工師さん、緊急事態です。ギルドへ行ってまいります」 「あ、あぁ」  振り返らずに告げた言葉。男の返答を聞くやいなや、リューティスは工房を飛び出した。その隣にギルド職員らしき女性が並ぶ。 .
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