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しかし、キオレが出した答えは、予想外のものであったのだ。
「──私は、リューティスにリーダーを任せたい」
「────っ……」
何故、という言葉を呑み込んで、僅かに目を細める。彼女の考えが読めない。何を考えているのかわからない。
リューティスが黒紫騎士であることを、この二人に告げるつもりなのか。それは阻止したい。黒紫騎士は名前も顔も知られていない陛下の近衛騎士たちである。名前も顔も知られていないが故に、民や時には貴族に紛れ込み、影からも陛下を守ることができる。
黒紫騎士であることが知られてしまえば、動きづらくなってしまうのである。そのため、黒紫騎士は黒紫騎士であることを周りにすら知らせていない者が多く、リューティスもまたそうであった。
「っ何でこのガキなんだよ!」
ライアンの怒りの含まれた声が、鼓膜を叩いた。リーダー役を務めるのは、苦手ではない。立場柄、リーダーをするのは慣れている。
しかし、協力するのは苦手であり、共闘をすれば必ずといっていいほどに周りに迷惑をかけてしまうリューティスである。初めて会う者たちに、うまく指示を出す自信はないのだ。
「……僕では無理がありますよ」
「やってみなければわからないじゃろう?」
ライアンのことは放っておき、キオレと言い合う。唇の端を吊り上げたキオレに、リューティスは溜息を吐き出した。
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