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「なぜ僕なのですか。……僕としてはミーシャさんにお任せしたいのですが」
慢心をしているライアンには、任せたくない。自滅の道連れにされたくはない。
「ライアンはあてにならんし、ミーシャは積極性が無さすぎて不向きじゃ。もし私が討伐隊に参加するなら、お主の指示に従いたい」
その瞳は真摯にリューティスを見つめていた。彼女の言葉に偽りがないことは、明らかだ。
だが、彼女がそう思うのは、リューティスが黒紫騎士であることを知っているからに違いないのだ。そのことを知っていなかったら、迷いながらもミーシャにリーダーを任せようとしていたはずである。
「僕には無理です」
きっぱりと言い切ると、ライアンが顔を歪めたのが見えた。リューティスがリーダーにならなかったことが嬉しくないのだろうか。彼もキオレと同様、何を考えているのかのかわからない。
「僕は共闘が苦手ですから」
リューティスが共闘できるのは、極わずかの背を預けられる者たちだけである。
「……まず、リューティスの武器は何じゃ? 魔法も使うじゃろう? 弓か何かか? ならば共闘が苦手ということはないじゃろう? 弓で一人で戦い続けるのは難しい」
魔法を使うというのは、彼女ここ数日で得た情報であろうか。
弓の使い手は、誰かと共に戦うことになれている者が多い。弓のみを使って一人で戦えるのは、気配を隠すことに長けた者くらいであろう。
付け加え、エルフ族には弓を使う者が多い。魔法でも戦うが、弓を主力にしている。リューティスにエルフの血が混じっているなら、弓を使う可能性が高いと思ったのだろう。
しかし、リューティスの武器は刀だ。そして、この国で刀を使う者は少ない。刀は東の国の武器であり、刀を使う者のほとんどは東の国の出身者である。
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