九章 緊急招集、黒大鹿討伐

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  「父親がどうしたっつんだよ」  苛立ちのこもった声と視線。 ライアンの態度は変わらない。 「──イヴァンス?」  しかし、ミーシャは気がついたらしい。小さく名字を呟いて目を見開く。 「……得意属性は同じですよ」 「母親にそっくりだそうじゃないか」  そのようなことまで噂になっていたのか。 「森属性も持っているんじゃろ? 母親の遺伝の方が強いの」  森属性──植物属性の別名である。リューティスのもうひとつの得意属性である。 「…………」  黙り込んで目をそらすと、キオレが小さく笑う声が聞こえてきた。 「本題に戻りましょう」  これ以上言い合ったところで、負けることは目に見えている。話をそらすために、リューティスは本題を持ち出した。 「リーダーは誰がつとめますか? 僕は年齢的にリーダー役は向きません」 「年齢的なんぞ関係無かろう?」  彼女のその発言で、リューティスはようやく気がつく。エルフであるキオレにとって、年齢というものは然程大きな問題でないのだということに。  彼女からしてみれば、十六の小僧も二十数歳の大人も、餓鬼なのだ。彼女の年齢はわからないが、百は生きているのではないだろうか。 .
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