九章 緊急招集、黒大鹿討伐

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  「リューティスは上級まで使えるぞ」  その噂はどこで仕入れてきたのか。幸い、最上級魔法が使えることまでは知られていないようであるが。 「上級っ!?」  驚愕に見開かれたミーシャの瞳が、リューティスを凝視した。──上級魔法が使える者は少ない。Sランクの持ち主ならば当たり前であるが、Aランクで上級魔法が使える者は滅多にいないのだ。 「……嘘に決まってんだろうが」  顔を歪め、歯軋りがしそうなほどきつく葉を噛み締めたライアン。こちらに恨みでもあるのかと思ってしまうほど、憎らしげに睨みつけてくる。 「リューティス、街中で魔法使ったじゃろう」 「──え」  街中で?  リューティスは首を傾げた。街中で魔法を使ったのは、工房の中と宿の中くらいである。道の途中などで使った覚えはない。誰かに見られていたのだろうか。   リューティスがこの街についてからのことを思い返していると、キオレは楽しそうに笑った。 「魔力感知結界じゃよ」  キオレの言葉に、顔をしかめてしまった。  魔力感知結界は、その名の通り、魔力を感知するための結界である。特徴としては、この結界自体に込められる魔力が少なく、またさらにその存在をさとらせにくくする魔法を組み込みやすい構造となっているが故に、魔力に敏感な者でも結界の存在に気がつきづらいことがあげられる。 .
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